音楽のデジタル化と共にこの10年ほどで小型・軽量化が進んだDJ機材。
パソコンやモバイルデバイスとの連動が前提とされるデジタルDJ機器の進化により、リーズナブルな価格の機材も続々と登場し、ライトユーザーとして一般の人にもDJ機材導入の門戸が広がりました。
DJ機材の世界ナンバーワンブランド「Pioneer DJ」
そんなDJ機材の世界で圧倒的世界ナンバーワンブランドとして知られているのが「Pioneer DJ」。
Pioneer DJという名前は聞いたことがあっても、その運営元についてご存知の方は多くないかもしれません。
国内有数のオーディオ関連機器メーカーとして知られ、現在はカーナビなどを手掛ける電機メーカーであるパイオニア株式会社の一部門として生まれたPionner DJですが、数回の事業売却を経て現在はAlphaTheta株式会社という会社のもとで運営されており、そのAlphaTheta株式会社の99.9%の株式を保有する親会社が東証プライム上場企業であるノーリツ鋼機株式会社という会社です。
上場企業であるため、決算資料が一般公開されており、AlphaTheta株式会社の業績は関連資料より知ることが出来ます。
今回はノーリツ鋼機の決算資料より世界一のDJ機材メーカーPioneer DJ(AlphaTheta株式会社)のビジネス構造について簡単に調べてみました。
AlphaTheta株式会社の2023年の売上は約519億円
2023年1月1日から2023年12月31日までの業績が開示されたノーリツ鋼機の決算資料によると、AlphaTheta株式会社の2023年1年間の売上は519億3000万円となっており、2022年と比較すると42.8%増となり、昨年比でかなり業績を伸ばしていることが読み取れます。
AlphaTheta株式会社の事業内容は、DJ/CLUB機器、業務用音響機器、音楽制作機器の商品開発・設計・及び販売、ならびにそれらのサービスに関する事業となっており、Pioneer DJブランドのハードウェアやrekordboxブランドのソフトウェア、それらに付随するサービスがメイン事業で、それ以外の事業は行っていないと思われるため、純粋にDJ関連製品のみからの収益と言えそうです。
AlphaTheta株式会社の2023年の利益は約133億円
利益は133億5200万円となっており、2022年と比較すると93.6%増となり、利益も大幅に伸ばしていることが読み取れます。
ちなみにノーリツ鋼機の決算報告資料には、事業EBITDA(営業利益から、その他の収益・費用を加減し、減価償却費及び償却費(使用権資産の減価償却費を除く)を加えて算出)という指標が使われていますが、おそらく本サイトのユーザーのほとんどには馴染みのない専門的な用語であるため、ここでは分かりやすく「利益」と読み替えてご紹介しています。
売上519億に対して利益が133億ということは利益率は約25%となり、経済産業省による2021年データでは製造業の営業利益率の平均が3.4%とされているため、かなり高い水準であると言えます。
圧倒的な業界トップブランドであることも高い利益率を出せる理由の一つと考えられそうです。
日本国内の比率はどれくらい?
2023年の売上約519億円・利益約133億円というのはグローバルでの数字となっており、地域別売上収益構成比は以下のグラフで表されています。
具体的なパーセンテージまでは確認することが出来ませんでしたが、このグラフから読み取ると各地域の構成比は、
- EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ):45%
- 北米・中南米:35%
- 中国:5%
- APAC(アジア太平洋):10%
- 日本:5%
ほどでしょうか。やはりクラブカルチャー、ダンスミュージックが盛んな欧米がほとんどを占め、国内比率は1割にも満たないという構造となっています。
単純計算で、売上約519億円・利益約133億円の5%だと仮定すると、国内の収益は、売上約26億円・利益約6.65億円となります。
2024年は売上556億、利益135億の予想がされている
ノーリツ鋼機によるAlphaThetaの2024年業績予想は売上556億、利益135億の予想となっており、予想通り売上利益ともに成長を維持できるのか注目です。
Seratoの収益もプラスされる予定
2023年にDJ業界では大きなニュースとなったAlphaTheta株式会社によるSeratoの買収。2023年時点では買収プロセスが完了しておらず業績には反映されていませんでしたが、2024年に完了予定となり収益に乗ってくると予想されています。
AlphaThetaはハードウェアがほとんどを占める収益構造から、ソフトウェアの比率を高めていくことを目指しており、約100億円という巨額で買収したSeratoもうまくビジネスとしてシナジーを生み出せるのかにも注目したいですね。
今後もDJ機器ビジネスは成長していくのか?
今回は業績を簡単にかいつまんで紹介しており、財務資料など他の決算資料も含めてより深く多角的に見ないと企業・ビジネスの本来の価値は見えてきませんが、少なくとも売上が伸びていっているということは、より多くのお金がDJ機材やソフトウェアを購入するために使われているということであり、今後もDJ機材メーカーのビジネスが成長していくのかどうかは注視していきたいですね。
参考資料:ノーリツ鋼機株式会社 IR情報