デジタル環境でのDJが一般的になり、レコードなどのアナログ音源を使用したDJプレイでは実現できない様々な機能が現在のDJ技術では利用されています。
その中で、DJのコアな要素の一つであるミックスにおける「SYNC」機能についてはこれまでも使用の是非について様々な議論が交わされてきた機能の一つです。
SYNC機能とは?
現在普及しているほとんど全てのDJソフトウェアやコントローラーに搭載されている「SYNCボタン」。SYNCとは、SYNC=同期の意味の通り、一方のデッキで流している曲ともう一方のデッキの曲のBPMを自動で合わせてくれるビートマッチング機能のことを指します。
SYNC機能を使うためには、事前にDJソフトウェアで曲の解析を行っておく必要があり、解析の結果得られた楽曲のビートグリッドを元に、トラックを伸長/短縮しBPMを自動的にマッチさせてくれます。
これまでヘッドホンでモニターしながらテンポフェーダーを使いながら細かく繊細に調整する必要のあった、DJテクニックの肝の一つである「テンポ合わせ」が不要になるため、チート的な否定的な意見が出る理由でもあります。
DJがSYNCボタンに警戒する理由
DJにとって最も基本的な仕事の一つであるミックスする楽曲同士のビートマッチングを自動化してくれるSYNCですが、実際プロの現場でも使用されているのでしょうか?
これはジャンルや現場のレベルにもよるでしょうが、現時点の答えとしては、「あまり使用されていない」というのが現状だと言えるでしょう。
デジタルDJが普及する以前は、プレイする音源の理解とBPM調整のスキルを必要とするテンポ合わせはDJにとって最も基本かつ重要なスキルの一つでした。テンポ合わせは多くの練習を必要とする習得するのが難しいスキルであり、多くの初心者DJにとって最初の壁になるDJの基本技術の一つです。
しかしながら、SYNC機能を使えばそのDJの基本技術がほとんど不要になり、そもそも「DJは何をしているのか?」という定義を変えてしまうほどのインパクトを持った機能であると言えるため、レコードの時代から長年DJをしてきた人達からすると、不正行為のような見方をしてしまう人もいるのでしょう。
SYNCは100%正確ではない
現場でDJに使用されない理由は技術的な理由もあります。
SYNCはほとんどの場合上手く動作しますが、一部の変則的なビートや展開の楽曲では意図しないビートマッチングがされてしまう場合もあり、テンポやタイミングが合っていないままミックスされてしまうという可能性があります。
完璧にビートグリッドにハマる曲であればSYNCでも問題はあまり起こりませんが、グルーブ感のあるスイングしたビートの曲などでは機械的にビートを正確に読み取るのが難しく、自分の耳で聴いて手動でミックスをする方が上手くミックス出来るパターンが存在します。
SYNCボタンが上手く動作しない楽曲が合った場合、手動でテンポ合わせを出来るスキルを身につけておかないと、強引で不自然なミックスをしてしまい雰囲気と流れを台無しにしてしまう可能性もあるでしょう。
まとめ
SYNCボタンによるビートマッチングはあくまでも手段であり、SYNC機能を使用しているかどうかが「良いDJ」の判断基準にはなりません。
よりクリエイティブなDJプレイのために、SYNCボタンを押して、他の操作やパフォーマンスに時間をかけることでオーディエンスを沸かせることができるのであれば積極的に使うべきでしょう。
同時に、SYNCボタンに頼って手動でテンポ合わせが出来るスキルを身につけておかないと、いざという時のミックス技術や楽曲に対するより深い理解を得ることが出来ていない可能性があることも理解しておく必要があるでしょう。
初心者DJの方は、まず手動でのビートマッチングを習得してから、時と場合に応じてSYNCボタンを使うか使わないかを判断する選択肢を持てればベストですね。