DJの技術の中で最も基本的なテクニックの1つに「ミックス」があります。ミックスは日本語で「混ぜる」という意味があり、何かを混ぜるというイメージがありますが、DJが行っているミックスとはどのようなテクニックなのでしょうか?
本記事ではそんな疑問を持つ人に向けて、DJが行っているミックスの概要と工程、ミックスで押さえておくべきテクニック、練習手順について解説していきます。
DJのミックスとは?
DJが行うミックスとは、曲と曲を途切らせずにつなげるテクニックのことです。音楽サイトやCDなどで音楽を聞く際は、曲と曲の間に少しの間がありますが、クラブのような現場ではDJが無音の状態を作る事なく常時音楽が鳴る状態を作り上げています。
プライベートで個人的に聞いたり、カフェでBGMとして流れたりしている場合は気になりません。しかし、大音量で音楽が流れ、音に乗って楽しむクラブやイベントなどの場所で、曲と曲の間に間が生じてしまうと、場の雰囲気が途切れてしまい、会場全体がしらけてしまいます。
このような状態を避けるためにはミックスが欠かせません。したがって、DJとして活躍するためには、ミックスの習得は必須条件だといえます。
ミックスの工程
ミックスの工程は次のとおりです。
- 曲が8カウントでできていることを理解しておく
- 次に流す曲を選ぶ
- 会場に流している曲と、ヘッドホンで流して自分だけ聞こえる曲を同時に聞く
- 2曲が混ざって聞こえている状態から、次曲のテンポを前曲に合わせる
- タイミングを見計らって次の曲を流す
- 前曲と次曲のボリューム、EQなどを調整しスムーズに曲を切り替える
ミックスは大きく分けて、5工程もあり、最も難しいのが「ステップ4」です。つなげる曲は別の曲同士となるため、当然テンポが異なります。
そのため、頭の中で2曲が混ざっている状態から、曲同士を上手くまとめ、良いタイミングで次の曲に入れ替えていくのは非常に大変な作業です。
ミックスで必ず押さえておくべき3つのテクニック
1.ロングミックス
ロングミックスとは、現在流れている曲と次に流す曲のテンポを合わせた状態を何小節もキープしてミックス状態を作った後、徐々に曲をつなげていくテクニックです。重なった状態が長くなるほどテンポがずれやすくなります。
そのため、ミックス状態でピッチフェーダーを調整したり、レコードを手で押さえて微調整しながらテンポをキープしなければなりません。曲のテンポがずれるとリズムに合わせて踊るお客さんのテンションを壊すリスクがあるため、ロングミックスはテクニックの中でも基礎中の基礎といっても過言ではありません。
2.カットイン
カットインとは、フェーダーなどを使用し、現在流れている曲から次に流す曲を一気に入れ替えるテクニックです。多少のテンポの違いを気にせず、強引につなぎかえることもできるため、かっこよさを演出できます。HIPHOPなどのジャンルでよく使われるテクニックの一つです。
瞬時に曲を入れ替えるため、必ずしも2曲のテンポが合っている必要はありませんが、BPMの大きく異なる曲同士をカットインで切り替えるにはセンスやその場の流れを掴む嗅覚が必要になり、ある程度DJとしての経験が必要になるでしょう。
また、つなげる曲の頭出しをしっかりと行わないと、意図したタイミングで最初のビートが鳴らせず曲のつなぎ目でビートが乱れるため、正確なジョグ操作とフェーダー操作が必要です。
3.音調整の安定性
音のバランスを調整し安定させることも、ミックスで押さえておくべきテクニックの1つです。曲によって音量や音圧、各帯域の鳴り方は全然違います。
普通に聞いている分には特に問題はありません。しかし、クラブといった大音量で音楽を流す場合、一般の方が思っている以上に差が生まれてしまうため、曲同士の音量、音圧やバランスの調整が非常に重要となります。
そもそもBPMが合っているとはいえ、音数が少なめのビートミュージックから音圧パツパツのEDMのような曲に繋ごうとしていないかなど、楽曲の特性を理解しておくことも必要になります。
曲の入れ替わりで違和感が生じないように調整するのも、DJには欠かせない技術です。
【入門編】ミックスの練習手順
1.フェーダーのみ
フェーダーとは、ミキサーについている、左右のデッキで再生される曲の音量や出力バランスを調整する部分のことです。ミックスは本来、EQを使用し高音・中音・低音と音の帯域ごとに細かく調整をしますが、最初のうちはEQ処理を省いてフェーダーで音量のみコントロールする練習をおすすめします。
基本的な手順は次のとおりです。
- 次に流す曲のBPMを合わせる
- 次の曲を再生開始しフェーダーを徐々に上げる
- 前に流している曲のフェーダーを徐々に下げる
2.EQのLow
EQとは、「イコライザー」の略で、曲の高音・中音・低音の各帯域に分けて調整する部分のことです。フェーダーのみのミックスに慣れたら、EQのLowによるミックスを練習していきましょう。
基本的な手順は次のとおりです。
- 次に流す曲のBPMを合わせる
- 次曲のLowを全カットした状態で再生開始
- 次曲のフェーダーを徐々に上げる
- 2曲のLowを少しずつ入れ替える
- 前に流している曲のフェーダーを徐々に下げる
3.EQのHiとMidの調整
曲同士で大きくぶつかるLowの調整に慣れたら、次はHiとMidの調整にもチャレンジしてみましょう。
Hiを全カットすると、中音のみが残ってしまうため、曲がこもって聞こえて悪目立ちする、また中音をカットしすぎるとスカスカになってしまうため、繊細な微調整が必要になります。そのため、トリムのラインを10時の位置くらいまでを目安にカットするほうがいいでしょう。
まとめ
今回はDJが行うミックスの概要と工程、押さえておくべきテクニック、練習手順について解説しました。曲と曲を途切らせずにつなげるミックスは、会場の雰囲気を壊さないためにDJが習得すべき基本テクニックの1つです。
習得すべきテクニックではあるものの、ミックスはテンポの違う2曲を上手くまとめ、タイミング良く次の曲を入れ替えていく必要があり、非常に高度な技術が必要です。一朝一夕で習得できないため、日々練習し続けなければなりません。
ミックスが上手くできないという方は、当記事の練習手順なども参考にしながら、少しずつミックスのスキルを磨き、DJとしてレベルアップしていってください。