数あるDJコントローラーの中でもミドルクラスに位置付けされる、10万円前後の価格帯のDJコントローラー。
今回はミドルクラス機種の中で今最も人気の高い、Pioneer DJ「DDJ-FLX6-GT」と「DDJ-800」の特徴と違いを比較してみました。
外観/レイアウト
DDJ-FLX6-GTは、マットグレーのボディとグラファイトカラーのジョグでより高級感のある見た目が特徴です。マスターやエフェクト類のボタンやツマミがミキサー部右側一列に並んでおり、そのラインのみボディカラーがブラックになっており視覚的に分かりやすくなっていますが、一本線が入ったようなデザインはバランスが悪いと感じる人もいるかもしれません。
ブルーを基調としたLEDのアクセントカラーも洗練された印象で、全体的にすっきりしたスマートなカラーリングだと感じます。
DDJ-800の方は、クラブスタンダードモデルのレイアウトを継承。クラブ常設機のボタンやノブ、フェーダーの配置および操作感を踏襲しているため、現場でのプレイの予行練習として最適だと言えるでしょう。
両機種ともにクラブ常設機として普及しているCDJ+DJMミキサーのレイアウトに近いレイアウトとなっており、普段クラブでDJをする人にとっては馴染みやすいデザインですが、後述するミキサーチャンネル数の違いもあり、DDJ-FLX6-GTは各チャンネルノブの左側に、DDJ-800は中央にボリュームメーターが配置されているという違いがあります。
サイズに関しては、若干DDJ-FLX6-GTの方が大きいものの、両機種ほとんど変わらないサイズ感だと言えるでしょう。対して重量に関してはDDJ-FLX6-GTの方がDDJ-800より900g軽くなっています。
ジョグサイズ
DDJ-FLX6-GT:206mm
DDJ-800:153mm
ジョグサイズは、DDJ-FLX6-GTの206mmに対してDDJ-800は153mmと、スクラッチのしやすさなどジョグ操作のしやすさという点ではサイズの大きいDDJ-FLX6-GTの方に軍配が上がります。
ただ本体サイズがほとんど変わらないということは、ジョグサイズの差は他の部分も影響しているということで、両機種左右8個の計16個搭載されているパッドサイズに関しては、DDJ-FLX6-GTの21.2 x 18.2mmに対してDDJ-800は24 x 24mmと、DDJ-800の方が大きいパッドが搭載されているためパッドを使用したパフォーマンスはDDJ-800の方がしやすいでしょう。
またピッチフェーダーもDDJ-FLX6-GTの60mmに対してDDJ-800は100mmと、ピッチの微調整も大きく動かせるDDJ-800の方がやりやすいでしょう。
ジョグディスプレイ
DDJ-FLX6-GT:なし(LEDのみ)
DDJ-800:あり
プレイ中の楽曲情報などを確認できるジョグ中央のディスプレイはDDJ-800にのみ搭載されています。
チャンネル数
DDJ-FLX6-GT:4チャンネル
DDJ-800:2チャンネル
両機種の大きな違いの一つが「チャンネル数の違い」。DDJ-FLX6-GTが4チャンネルに対して、DDJ-800は2チャンネルと、なっており、3つ以上のチャンネルを使用して即興のマッシュアップやロングミックスを行うようなプレイスタイルのDJには4チャンネルのDDJ-FLX6-GTが有利だと言えます。
対応ソフトウェア
DDJ-FLX6-GT:rekordbox/Serato DJ Pro/VirtualDJ/TRAKTOR PRO 3(TSIファイル公開)
DDJ-800:rekordbox
両機種のもう一つ大きな違いが、「対応ソフトウェアの違い」。DDJ-800はrekordboxのみ対応ですが、DDJ-FLX6-GTはrekordbox/Serato DJ Pro/VirtualDJ/TRAKTOR PRO 3と主要DJソフトのほとんどに対応しており、特定のソフトに依存しないマルチ対応が可能な柔軟性があると言えます。
DDJ-FLX6-GTでSerato DJ Proを使用する場合には、クリエイティブなDJプレイの可能性を広げるPitch’n timeとFX Packのバウチャーコードも無償付帯しています。
VirtualDJ/TRAKTOR PRO 3は別途ソフトの有償契約が必要になりますので、あえてこの二つのソフトを使用するというシチュエーションはあまり無いでしょう。
DDJ-800のみ対応している点としては、rekordbox DVSに有償対応という点です。rekordbox Coreプラン以上の契約があれば、DDJ-800をミキサーとしてDVSコントロールを行うことが可能です。
電源
DDJ-FLX6-GT:USBバスパワー駆動
DDJ-800:AC電源
両機種は電源の違いも明確です。DDJ-FLX6-GTは接続したパソコンから電源を供給するUSBバスパワー駆動なのに対して、DDJ-800は通常のAC電源が必要なためコンセントの確保が必要になります。
入出力端子
DDJ-FLX6-GT | DDJ-800 | |
---|---|---|
入力端子 | 1 MIC (1/4 inch TRS Jack) | 2 PHONO/LINE (RCA) |
2 MIC (XLR & 1/4 inch TRS Jack, 1/4 inch TRS Jack) | ||
1 AUX (RCA) | ||
出力端子 | 1 MASTER (RCA) | 2 MASTER (XLR, RCA) |
1 BOOTH (RCA) | 1 BOOTH (1/4 inch TRS Jack) | |
2 HEADPHONE MONITOR (1/4 inch Stereo Phone Jack, 3.5mm Stereo mini-jack) | 2 HEADPHONE MONITOR (1/4 inch Stereo Phone Jack, 3.5mm Stereo mini-jack) | |
USB端子 | 1 USB B端子 | 1 USB B端子 |
入力端子に関しては、DDJ-FLX6-GTにはマイクジャックが1つあるのみでほぼ拡張性はありませんが、DDJ-800には複数の入力オプションがあり、他の機器を接続して拡張することが可能です。先述のDVS対応もしかり、ターンテーブル等を接続して実際のミキサーとして使用するといった使い方が可能というのはDDJ-800の一つの特徴です。
価格
DDJ-FLX6-GT:¥99,000(税込)
DDJ-800:¥121,000(税込)
両機種のメーカー価格は22,000円の差があります。両機種の特徴や機能には一長一短があり、人によって優先するポイントが違うため、一概に価格だけで判断することはやや難しいですが、自宅やちょっとしたイベント等でDJを楽しむだけの用途であれば、価格もお手頃なDDJ-FLX6-GTに軍配が上がりそうです。
まとめ
「DDJ-FLX6-GT」と「DDJ-800」の違いを比較していくと、チャンネル数や対応ソフトの違いも大きいですが、電源や入出力オプションなど、設計思想の違いが明確に表れていると言えます。
DDJ-FLX6-GTはあくまでもPC接続ありきで自宅などで使用するDJコントローラー、DDJ-800は他の機材とも接続できる、より拡張性を持った現場使用の可能性も考えられたDJコントローラーだと言えます。